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マリーは意識を集中させた。
最初に綺麗になった部屋の姿を想像する。現状との差異を比べ、不要なものを認識する。必要な物は片付けるべき場所へ移動。
一気に大量の物を壊さずに移動させるのはかなり大変な事だと思った。
壊す時は何も考えず、範囲だけを指定して威力の高い魔法を放てばそれで終わり。
しかし、これらはマリー大事な物で、壊していいのはゴミぐらい。慎重に丁寧にマリーは想像した部屋を実現させるため魔法を使った。
実験経過の対象である置物に触れないよう、ゆっくりと本が本棚へ戻っていく。
飲み物が零れて濡れた床は乾いた布で拭き、一度着た服は洗濯用の籠の中に入れる。洗った服は箪笥へ。
食べ残しは台所の残飯入れに移動。後で火魔法で一気に焼却してやるとマリーは意気込んだ。
壊れた道具も廃棄するため廃棄用の袋の中へ入れる。次々と袋が一杯になっていく。
「ハァ、ハァ……」
部屋は綺麗に片付いたが、徹夜と栄養不足に加え、大量の魔力消費でマリーの疲労は限界まで達していた。
「すごい、黒魔法って部屋の掃除も出来るのね」
壊れた入り口から眼鏡の女性が覗き見している。その表情に変化はないが、声音は楽しそうである。
「主席の名は飾りじゃなかったのね」
「コホン、そこに座って頂戴」
誉められて嬉しくなったマリーはソファーへの着席を勧める。
女性は部屋の中に入ると、ストンと腰をかける。回りが見渡せるように部屋は綺麗になった。
マリーは汚れと匂いまでは綺麗にしていないので、後で服と一緒に洗おうと思った。
「改めて……名前と学生時代に一番頑張った事を教えて」
「ミア・サリヴァン、十八歳。一番頑張った事は人間観察かな?」
ミアは目線を上にして、考える仕草をした。
「観察?」
マリーは過去、ミアと同じように弟子になりたいとやって来た人たちに対して、同じような質問をしている。
普通ならば、競走や拳闘技、乗馬や水泳といった運動をあげる人たちが大半だったが、人間観察というのはどういう事だろう。
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