慟哭

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(まさか……)  バイクを降り、ヘルメットを颯爽と外した男へと視線が釘付けた。  眩しい金髪が揺れる。薄暗い中でも鮮やかに光る碧眼。さっき、死を覚悟しながらも想い焦がれた男、葛城青也だった。 「か、葛城さ……っ⁉」  名前を呼んだ途端に体は葛城によって抱き締められた。 「無事で良かった……!」 「っ……」  存在を確かめるような強い抱擁。ずっと触れたかった温もりに蒼生の瞳が涙で滲んだ。胸に響く心地良い声は、もう大丈夫だと言っているようにも聞こえた。 (彼だ……彼がここにいる)  やっと自由になった手には強い痺れが残っていた。それでも葛城の背に腕を回した。震えを起こす指先でジャケットを掴む。密着が深まった。冷えた体も、怒りで強張った心も、彼の温もりで全てあたためられ、溶かされていった。 「……それで、証拠は掴んだのか?」  森岡が鋭い視線を前方に送った。数メートル先には、葛城の一撃を食らった時東が倒れ込んだままでいた。その傍には成瀬と相澤もいた。時東を起こそうとしているのだろう。必死に声を掛けていた。 「ああ、ちゃんと録音してある」  葛城の腕に支えられながら立ち上がり、腕時計をチラつかせた。    時計にはもうひとつ機能が備わっていた。GPS信号が送られると同時に、録音機能が作動する仕組みとなっているのだ。成瀬のドラッグ使用、そして時東が語った全てが、記録として残っているというわけだ。会話を引き延ばしたのはこの為だった。
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