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「上出来だ。助けに来るのが遅くて逆によかったんじゃねーか?」
「まあ、半分は殺される覚悟でいたけどね」
平気ぶって笑ってみせた。
「悪かった、怖い目に遭わせて……」
森岡が真剣な声色で謝った。蒼生はかぶりを振った。
「森岡さんは悪くない。僕も甘かった……まさか相澤さんが絡んでいたなんて……」
そう言って隣に立つ葛城へと視線を送った。彼は複雑な表情を隠さずに成瀬と相澤の二人をジッと見据えていた。それもそうだ。尊敬する先輩と、自分のマネージャーが元凶だったのだ。葛城の心境を想うと胸が痛んだ。だが、まだやるべき事が残っている。彼らのした事は立派な犯罪だ。この証拠を持って、警察へと突き出さなければならない。
「あの女……相澤については俺も色々確認してたところだったからな」
森岡が厳しい目で相澤を睨んだ。
「色々って?」
「とりあえず話はあとだ。あいつらを逃がすなよ。警察には通報済みだ。それまで時間を稼げ。時東は特に逃がすな……あいつは相当な悪だ」
「わかってる……」
静かに頷くと、森岡が挑発をはじめた。
「おい、あんたら! もう逃げ場はねぇんだよ。素直に観念したら少しは罪も軽くなるんじゃねぇか? まあ、その時東って男はそうはいかねーけどな」
「冗談じゃないわよ……彪児さんだけは、私が守るんだから……全員消してやる……っ‼」
反応したのは相澤だった。彼女は殺気立ったオーラを放ってゆらりと立ち上がる。そしてジャケットからコンパクトタイプのサバイバルナイフを取り出した。鋭利な刃先がギラリと光る。
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