慟哭

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「おいおい、物騒だな。そんな事をしても何の意味もねぇんだよ。成瀬みたいなクソ男に人生を棒に振るな。もったいねーよ」  凶器を目にしても森岡は動じない。落ち着いた態度で相澤へと近付いていく。 「彪児さんを馬鹿にしないでっ‼」  金切り声を上げた相澤が物凄い形相でナイフを振り回しながら森岡へと襲いかかった。 「やめろって! 成瀬がどれだけ酷い男か知らねぇのか!? あいつはな、来年グローバルプロの社長令嬢と結婚するんだよ! あんたは騙されて、いいように使われてただけなんだよ!」  ナイフを素早く避けた森岡は全てを暴露した。 「そんなわけないじゃない! デタラメを言わないで‼」  聞く耳を持たない相澤はナイフを手に暴れまくる。 「おっと、あぶねーな!」  刃先が森岡の脇腹ギリギリをすり抜けた。 「森岡さ……っ!?」  助太刀が必要だ。駆け出した蒼生だったが、ここで時東が脇腹を押さえながら身を起こした。彼は成瀬に介抱されながら、逃亡しようとしていた。 「くそっ、逃がすか!」 「おい、待てって!」  葛城の制止の声を振り切って時東を追い掛けた。 (絶対に逃がさない!)  過去を解き放ち、母の無念を晴らす為に蒼生は走った。そのスピードは獲物を狩る野生の黒豹のようだ。  仕留める範囲まで距離を縮めた時だ。気配に気づいた時東が振り返った。その瞬間、蒼生は飛び蹴りをかます。続いて時東に体当たりをした。体同士が激しくぶつかった。
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