慟哭

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「は、はい……!」  腹を抱えて立ち上がる成瀬だったが、その動きは止まった。 「……成瀬さん、もう止めて下さい。これ以上、幻滅させないで下さい」  葛城が成瀬の目の前に立ちはだかった。 「……っ、青也!」 「成瀬さん、どうしてこんな事を? そんなに俺の事が嫌いでしたか?」  ストレートな問いに成瀬は両肩を震わせた。 「……ああ、そうだよ。嫌いに決まってるだろ! いつも俺を見下して……お前さえいなければ、あの映画だって……!」  醜い嫉妬を爆発させる成瀬を葛城は何も言わず静観していた。 「俺はな、誰もが認める成瀬彪児だぞ!? 分かってんのか!? お前みたいな、どこで生まれたかわからないような奴とは違うんだよ!」  嫌な言い方だ。葛城の片眉がピクリと動いた。彼が孤児であり、施設で育ってきた事を成瀬は揶揄しているのだろう。 「俺を差し置いて調子に乗るなよ! しかも……クラブで余計な事、しやがって!」  ドラックのことを指しているのだろうが、葛城からしたら偶然撮っただけのものだ。しかし、そんな言い分は成瀬には通用しない。彼の表情はみるみる醜悪なものへと変わっていった。 (まずい……)  蒼生は警護を優先した。四肢を縛られて暴れる時東から離れ、葛城を護るようにして立った。今の成瀬は何をしだすかわからないからだ。 「成瀬さん……」 「なんだよ⁉」  吼える成瀬とは対照的に葛城は静かに息を吸い込んだ。
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