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「……俺は、成瀬さんを養成所時代からずっと尊敬してきました。あなたが俳優をメインに活動してからも、その背中をずっと見てきました。昨年、映画で共演出来た時は……本当に嬉しかったです」
本心なのだろう。その表情からは嘘など感じられなかった。
「よくそんなことが言えるな! 俺より人気が出て、さぞかしいい気分だっただろうが! 主役の俺が、なんで二番手のような扱いを受けなきゃなんねぇんだよ! クソが!」
駄々をこねる子供のように成瀬は地団駄を踏んだ。
「俺にどんな感情を抱いていたとしても、成瀬さんのした事は間違ってる。それだけはハッキリと言えます。だから俺は、あなたを絶対に許さない」
怒りを秘めた青い双眸が成瀬を射貫く。
「ああ? なんだよその目……気味の悪い色しやがって。実はそれ、ヤバい血筋とかじゃねぇの? だとしたら笑えてしょうがねーよ」
侮辱がエスカレートしていく。それでも葛城は成瀬をジッと見据えていた。
「彪児! お前、何をベラベラ喋ってんだ!? 早くこれを解けって言ってるだろ‼」
時東の怒鳴り声が響く。しかし、今の成瀬は葛城ばかりに気を取られているようだ。
「青也……俺はな、お前をこの芸能界から消し去りたくてしょうがないんだよ……邪魔なんだよ」
何かに取り憑かれた様子で成瀬がブツブツと語り出す。煮え滾る嫉妬が狂気へと化していた。
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