オレンジ畑のピンボール

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オレンジ畑のピンボール

 その記者もオレの回答には納得していないようだった。最近、よくインタビューを受けるようになった。スターってヤツは大変だなと思う。しかし、オレは子供からサインをねだられるような選手じゃないし、球場の壁にでかでかと写真が飾られるような選手でもない。  いまのチームに来て三シーズン目になる。オレたちのホームグラウンドはレフトのフェンスがティーンエイジャーの頬のようにでこぼこで、直撃の打球をくらえばあっちこっちに跳ね返る。下手をすればインサイドパーカーってこともある。オレはその処理に自信があった。打撃はイマイチでも、チームはオレの外野守備のために使ってくれていた。オレがメシを食えているのはそのフェンスのおかげだと言い切ってもいい。  オレがやっているプレーは過去の二シーズンと大きく変わっていないと思う。だが、周囲の状況が変わり始めていた。ある時、どっかの誰かが計算式を思いついたらしい。きっと、ストライプのスーツを着た、いけ好かないヤツだ。ソイツのせいでオレに守備について聞きたいという記者が増えた。  その守備力を測る計算式については一度レクチャーを受けた。でも、サッパリだ。だからプレーするときには気にしないようにしている。インタビューでオレから技術的なことを聞き出したいのはわかる。でも、オレ自身にもわからないことばかりだ。だから代わりに、オレはいつも自分に起こったことについてシリアスに話してきた。ヤツらを茶化すつもりなんてない。
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