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私が彼女を見つけた時にはもう、彼女は息をしていなかった。それからのことは、あまり覚えていない。風呂場で手首を切り青白くなった彼女を見つけた私は急いで救急車を呼んだ。警察からあれやこれやと話を聞かれたけれど、彼女の具体的な死の理由など私にわかるはずもなかった。私が知っていることといえば、近頃の彼女はふさぎがちだったこと、彼女の大切なひよこが死んでしまったこと、彼女はとても優しい女性だったということだけだ。
それから数年後、動物愛護団体の反対を受けて縁日からカラーひよこは姿を消した。
もしかすると、彼女は精神的な病だったのかもしれない。今でこそ周知されてきてはいるものの、当時は精神病に対する理解が今ほどなかった。彼女がなんらかの病気を患っていたのかどうか、本当のところはわからないけれど。
ただ、私は今でも思う。自ら死を選択するまでに至った彼女に対して、もっとしてやれることがあったのではないかと。私が仕事にばかりかまけていないで、毎日彼女に大好きだよ、と伝えていたら少しは何か変わったのだろうか。
こうして、結婚して二人の子供が成人を迎えた今になっても、夏が来る度に私は彼女のことを思い出す。あの日から私は、青に囚われたままだ。
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