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「あー、外部からの新入生の逢阪 楓です。今すぐ記憶抹消したいんで、さっさと鍵ください」 こんなのが日常茶飯事ならば、兄がこの学園に入学するのを渋ったのも納得である。 風習としてこの閉鎖的な男子校のなかで、そういった恋愛や性的アレコレがあるのは聞いていたけど…職務怠慢のうえ公共の場でなんて、野生動物の発情期か? 「手厳しねー!逢阪ってらことはあの逢阪様の弟ね、ふーん似てないねー!」 「よく言われます。」 つんと返すと唇を尖らせながらも全く気にしない様子にさらにイラっとした態度を敢えて出してみる。 「つれないなー、ま、いーけどさ!俺は今忙しい寮監の代理です!普段は一般生徒だから校舎で会うかもね!寮監にはさっきの内緒にしてね!殺されちゃうから!」 「…で、鍵は?」 否定も肯定もしないが、もし寮監に会うことがあればチクってやろう。そうしよう。 「はいはい、これね!一年だし外部生だから二人部屋だよ、仲良くね!」 「あなたじゃなければ誰とでも仲良くできますよ、それでは。」 「ひどいー!俺はまだマシなほうなのにー」 …え、これが? 差し出されたカードキーを手にしながらこの先の学園生活が危ぶまれ、ちょっと沈んだ。 貰ったカードキーには3056とあったのでエレベーターで3階を押し、矢印の案内に沿って寮内を進む。 これは慣れるまで迷子なりそうだ… 内装もホテルみたいで、絨毯や壁紙、扉の羅列も同じで大変だ、寮だからって悠長にしてると遅刻しそう…気をつけないとな。 っと、ここが3056か…エレベーターからは遠いけど階段は割と近いのか、階段使った方が早いかもな…なんて周りの様子や景色を頭にたたき込みながらカードキーをスライドさせるとピピっと音がして小さなランプが赤から緑になる。 こういうのまでホテルっぽいのか…と感心しながら室内へ入る。 「へぇ、割と広いんだな」 ソファとテレビ、そして簡易キッチンのならぶリビングと前後にあるドア、寝室は個室になっていて、入り口のすぐ横にあるドアはおそらく洗面所や風呂、トイレになっているのだろう。 自宅の部屋と比べればさすがに狭いが、暮らすのに申し分ない部屋だ。 同室がどんな奴かはまだわからない…というか来てないけど、とりあえず手前の部屋を覗くと中にはあらかじめ送っておいた荷物と先ほど持ってきたトランクが見えたので早速荷ほどきでもしてしまおうかと部屋の中へ入った。
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