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「・・・空の色 、塗らないんだな」
「はい、そうですよ。塗り忘れではありません。これで完成品です!」
曇り空であればそれもありえるのだが、この絵には太陽も雲の描写もあるので、
普通であれば「青く」塗るはずである。
しかし彼女は「青色」使わなかったのだ。
いつも「青色」のペンを咥えているにも関わらず。
赤実かすみが入部してから半年程経つが、彼女がいつも青いペンを咥えている理由は、未だに謎のままである。
「なんですか、そんなにこっち見て・・・今さら気になりますか? コレ」
ちゅぽんと、かすみは口に咥えていた青色のペンを引き抜く。
「あ、いや。別に」
そう否定したものの。
ついついかすみの咥えていた青色のペンをじっと見てしまう。
彼女が指で摘んでいるその青いペンは、彼女の唾液で濡れていて何だか艶めかしく感じた。
「えぇ・・・なんですか、先輩。そのいやらしい目は」
かすみは部室に置いてあるティッシュを一枚取ると、青色のペンに付いた唾液を拭き取る。
「いやいやいや、絶対にいやらしい目でなんて見てない。見てないから」
「えー、本当ですか?」
一応否定はしたものの、かすみに睨まれてしまった。
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