プロローグ

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ゴーグルをはめると、目の前には樹海が広がっていた。 小鳥のさえずりや木の葉が擦れる音が聞こえ、僕たちは木刀を持ち、旅人の服を着た冒険者となっている。 何というリアリティだろう。とても2年前に出たとは思えないできだ。 「す、すごい…」 『敵が来るよ』 僕が木刀を構えると、鳥が一斉に枝からはばたいた。 枝葉をかき分けてオークが姿を見せたのだ。 その顔は豚顔でいかつく、皮膚はごつごつしていて、体も引き締まっている。こうみるとまるで鬼のようにも見えてくる。 オークは僕たちを見ると牙を剥いて唸り声をあげた。 『行くよ!』 駆けだすと、バトルミュージックが再生された。 オークの棍棒が振り下ろされると、近くの樹木がなぎ倒された。 僕は素早くステップで避けると、オークの側面に回り込んで、後頭部を木刀で殴り付ける。 すると、オークの頭上に表示されていた緑色のバーにダメージが表示され、一気にバーが赤くなり、オークが崩れ落ちて消滅した。 すると、戦闘勝利の音楽が鳴り、目の前の樹海は真っ暗な空間へと戻った。 ゴーグルを取ると、そこはいつものコンピューター室だった。 結奈は顔を赤らめて興奮気味のようだ。 「すごい、すごいよ…優斗君!」 『まあ、リアルさが売りのゲームだからな』 「…でゅふふふふふ」 まさか… 「もし、今のオークに負けたら…優斗君は…オークの戦士に…」 恐る恐る結奈を見ると、結奈は頬だけでなく耳まで真っ赤にして、ワケの分からないことをつぶやいている。 僕は、実に危険な女にエサを与えてしまったようだ。 ん、結奈が僕が持っている説明書をじっと見たぞ。 「何か書いてあるよ。パンドラの箱…エルピス?」 『これを残した先輩がメモでもしたのかな?』 僕はこの時、この言葉の意味を深く考えなかった。
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