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結奈の書いた作品。それは小説とライトノベルを足して2で割ったような印象だった。
ゲームのシナリオとしては少々使いづらい所もあるが、不思議と先を読みたいという感情がわいて来る。キャラクターが魅力的なのか、言い回しが上手いのか、それともストーリーの展開の仕方が絶妙なのか、本をあまり読まない僕には判断できないが、この作品に魅力を感じた。
『なるほど。おもしろい作品だと思うよ』
そう答えると、結奈はほっと肩の力を抜いた。僕はすぐに『だけど…』と言葉をつづけた。
『既存の絵や曲じゃ…この世界観とは合わないね』
結奈の表情が曇った。事実を指摘させて途方に暮れてしまっているようだ。
結奈の書いた作品はギリシャ神話をモチーフにしており、パンドラの開けてはいけない箱を巡る話だ。
ギリシャ神話の世界観を再現するのなら、登場人物は最低でもキトンという服を着て、足元は縄サンダルを履き、住んでいる家は、どちらかと言えば石造りの建物だろう。
それから、登場させる武具や装飾品などにも注意が必要だ。
ダイアモンドの加工は当時は無理だろうし、高性能な武器や防具は人間の手で作ることはできない。
結奈の作品の出来を考えると惜しい気もするが、こればかりはどうしようもない。
そう思っていたら彼女は目を輝かせた。
「絵を描いてくれる人を連れて来ればいいんだね?」
『え…?』
一瞬、呆然としてしまった。そういえば結奈って、猪突猛進なところがあったっけ。
「心当たりがあるから、友達を当たってみるね!」
ここまで言われたら、僕も引き下がることは出来ない。
結奈の作品を動かしてみたい気もするし、ここは一肌脱ぐとしようかな。
『わかった。
僕は図書室で古代ギリシャの資料を探してみる』
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