プロローグ

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プロローグ

それは、フォルダーの中にこっそり隠れていた。 「ねえ、優斗君…これ、なんだろう?」 『起動してみよう』 試しに開いてみると、まず挿絵やロゴと共にバージョン情報が表示され、やや遅れてアプリケーション本体が起動した。 『…ゲーム制作用のアプリケーション…かな』 結奈は少し考えて言った。 「そういえば、こんな絵の箱…あっちの準備室になかった?」 僕らは今、コンピューター室にいる。 コンピューター室には何十台というデスク一体型パソコンがあり、奥の準備室には様々な備品と一緒に、先輩の残した私物が放置されている。 僕と結奈は準備室に入ると、先輩の私物入れの中から一つの箱を手に取った。 そこには、先ほど見た挿絵と同じ絵が描かれており、中を見ると説明書まで入っている状態だった。 『凄いな。ここまできちんと残っているなんて…』 あらためてコンピューター室に戻ると、説明書を読みながら画面を見てみた。 どうやら先輩は、四中コンピューター部というユーザー名で登録してくれたらしい。これなら僕ら後輩でも大手を振って使うことができる。 説明書を見ると、どうやら中のデータには全く手を加えていないようだ。 結奈は興味津々な様子で僕に聞いてきた。 「ゲームって…いろいろあるけど、どんなことができるの?」 『これは、2047年に開発された、疑似体験型ロールプレイングゲームを作るソフトみたいだ。 アシスタント人工知能が搭載されているから、例えばキャラクターの全身画を正面と背中だけを書けば、自動的に立体画像に変換してくれるし、キャラクターの特徴や生い立ちを設定しておけば、自動的にセリフをチェックしてくれる機能もあるみたいだね』 その話を聞いて結奈は身を乗り出して画面を見た。 「おもしろそう。ねえ…モンスターと戦ってよ」 『え…構わないけど…』 僕はモンスターデータのタグを指で触ると、敵の中からオークを選びテストプレイの項目を選択した。 主人公とヒロインのレベルは10。装備は初期装備の木刀と旅人の服のみ。 『ゴーグルをはめて』
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