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食べ終わった少女は、再び泣き顔で私を見つめた。でも、少し落ち着いたようではあった。私は少しほっとした。が、その瞬間、突然少女は走り出し、私の横をすり抜けて、凄まじい勢いと速さで玄関から出て行ってしまった。
私はあっけにとられ、その場に立ち尽くしまま、その少女の出て行った自分の部屋の玄関を見つめることしかできなかった。
我に返った私はコーヒーを淹れようと思っていたことを思い出し、キッチンに行くと再び電気ポットに手を伸ばした。当たり前ではあるのだが、マグカップは最初に置いたところと同じところにちゃんと置かれていた。しかし、その時、それが私にはなぜかすごく奇妙なことのように思われた。
コーヒーを淹れ、ふと見ると、少女が入ってきた網戸が開け放たれたままベランダの前に虚しく佇んでいた。
今日も昼少し前に起き、けだるい体でスーパーの陳列棚で一番安い値段の付いていたインスタントコーヒーを淹れ、それを片手にちびちびとまだ眠っている老朽化した胃に啜り入れた。
私の職業は一応作家だった。しかし、最近では全く収入はなく、過去に出した本の印税と、その本で取った賞の賞金合わせて七百万円程の貯金も使い果たそうとしていた。
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