ある団地の庭の書斎にて

7/16
前へ
/16ページ
次へ
 猫はそれからちょくちょく私の空間へやってくるようになった。その猫は恐ろしく人懐っこく、いつもにゃーにゃ―と寂しさを訴えかけるように自分の方から私にすり寄ってきた。私もそんな猫が堪らなく好きになった。  猫には首にバンダナのような赤い布がオシャレに巻かれていた。どこかの飼い猫らしかった。猫は私が何か餌をやっても絶対に食べようとはしなかった。それはまるで自分の中の絶対的なルールであるかのようであった。  私は勝手にその猫をマイケルと呼ぶようになった。その名前に特に意味はない。ただ浮かんだ名前を勝手にそのまま使っただけだが、それが私にはどこかしっくりと感じた。  今日もマイケルはやって来て、私の膝の上に乗った。最近では私がしゃがまなくても椅子に座っている状態で膝の上まで登ってくるようになった。  私は以前犬が好きだった。猫など何がかわいいのか全く理解できなかった。しかし、いつの頃からか私は猫が好きになっていた。それはいつの事だったのか、何がきっかけだったのか、全く覚えてはいない。しかし、なぜかそうなっている自分に改めて不思議な思いをもった。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加