ファルシオン

2/2
前へ
/13ページ
次へ
 僕は仕事に疲れて鳥浜駅近くにあるバー『ファルシオン』でジントニックを飲んでいた。   エミネムの『8Mile』が流れている。 「ねぇ?面白いゲームをやりません?」  有閑マダムタイプの女がやって来た。  ビリヤードの台にサイコロが2つ置かれてある。  さらにホワイトボードにはかなり卑猥なことが書かれてあった。  2野外  3学校  4人妻  5オフィス    6ぶっかけ  7電車  8コスプレ  9オナニー  10温泉  11病院  12カーセックス   「こりゃあ何ですか?」 「溜まってるんでしょ?」  マダムは股間の上からぺニスを撫でてきた。  ぺニスは乾いていてトランクスの中で萎れていた。が、撫でるたびにムクムクと大きくなっていく。 「日本から法律が消えて久しいわね?」  2020年、国際テロ『ガーターパンチ』が首相の家族を人質に静岡県にある翡翠島ってところに立て籠り『犯罪自由化』を要求した。  妻子の命を救うために我孫子首相はこの無謀な要求を飲んでしまった。  あの日から2年、未だにガーターパンチは我孫子の妻の成美と息子の大地を人質に立て籠っている。  これまで何度も上陸作戦を試みたが全て失敗に終わっている。  ファルシオンは犯罪自由化によって生まれた店だ。 「拒否すれば命はないわよ?」  マダムはホルスターからリボルバー拳銃を取り出して僕に向けた。   一昨日夕食の途中に妻から言われた。 『そろそろ拳銃でも買った方がいいかも知れないわね?』 『僕は人を殺したくなんかない。それに暴発の危険だってある』  あのとき素直に聞き入れておくべきだった。  きんぴらごぼうが固くてそれどころじゃなかった。イヤ、変な意味合いはない。  僕は両手を挙げた。 「わかった。参加する」 「素直でよろしい」  マダムがゲームのルールを説明した。 ・サイコロを2つ振り出た目の合計に該当するナンバーのセックスをする。 ・テーマ以外のセックスをした場合死刑にする。 ・同じ数を2回出した場合も死刑にする。 ・標的に逃げられた場合も死刑にする。 ・クリア条件 全てのミッションをクリアせよ。 「ずっ、随分と難しそうなゲームだな?」 「クリアしたら1000万、どう?面白そうでしょ?」 「うん、クリアしたら12人とやることになる。同僚たちに自慢できるな?」  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加