第1章

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 また少し高い波が押し寄せてきた。波はオレの胸を濡らし、女性の顔を濡らした。波に洗われたその白い頬には、夜光虫の青白い光が張りついていた。その黒髪にも、その細い首にも。その瞬間、月が雲に隠れた。空からの光が遮断され、海中の光が強さを増した。そして、無数に漂う光のすべてがオレを見ているように感じだ。  また高い波が押し寄せてくる音が近づいてきた。次の波で、きっとオレを頭から海に浸かることになるだろう。 「ソウタくん、行きましょう」  柔らかい声、優しい微笑み、細く白く熱のない身体。すべてはオレという餌をおびきよせるために。オレの全身を恐怖が貫いた。  オレは手を振り払い、必死で青白い砂浜から逃げ出した。
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