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ここの海の家は、『ナミの店』といい、看板メニューはナミカレーだ。この近くで獲れたシーフードが使われているらしい。タオルをバンダナみたいに頭に巻いた熊みたいなおじさんが店主で、その奥さんと小学生くらいの男の子も店を手伝っている。
「ねえ、これなに?」
後輩の女の子が壁に掛けられた写真を指差した。オレはドキっとした。それは、暗い夜の海が青白く輝いている写真だった。
「これはね夜光虫っていうプランクトンが光ってるんだよ。ホタルと同じ、ルシフェリンっていう光る物質を身体の中に持ってるんだ」
オレがなにか言う前に、理系のタク先輩がドヤ顔で薀蓄を披露しはじめた。
「すごい!こんなにキレイなんですね」
「もしかしたらこの辺りでも見れるかもしれないね。今夜探してみようか」
みんなが一斉に賛成し、タク先輩も満足げだ。最近SNSにハマっているケンジも、いい写真を撮るチャンスだと乗り気なようだ。
オレは壁の写真にもう一度目を向けた。昨夜の冷たい夜風と波、そして水のように軽く触れたキスの感触を思い出した。すべてが生々しく、夢ではありえない現実感があったのに夢であったような気もした。
「どうしたんだよ、ソウタ」
「いや、なんでもない。夜光虫みれるといいな」
隣のテーブルでは、スイカ割りをしようと盛り上がっている。店主の息子よると、この店のオススメが、スイカ割りセットだからだそうだ。サークルメンバーに懐いた男の子も、ちゃっかり参加する側にまわっていて、店主と奥さんもそれを微笑ましく見守っている。
オレはナミカレーを頬張った。昨夜のバーベキューはほとんど食べられなかったこともあり、とても美味しく感じられた。それと同時に、今夜もあの小さな砂浜に行こうと心に決めた。
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