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その夜、暗くなってからサークルメンバー総出で行った夜光虫探しは、あっけなく終わった。昼間にみんなで遊んでいた砂浜ですぐに見つかったのだ。波が打ち寄せて引いた後の砂にキラキラと残る夜光虫の光に騒ぎ、波に揺られて灯る光にカメラを向けて、とみな忙しい。昨夜の小さな砂浜で見た夜光虫の密度には程遠いほどまばらだが、それぞれに楽しんでいる。
「これうまく撮れてると思わない?」
ケンジがスマホで撮った夜光虫の写真を自慢げに見せてきた。少しブレていたが、水の中に光があるのがよく写っていた。
「ソウタは写真撮らなくていの?」
オレはいい、と言ったがケンジは納得していないようだったので、無理やり話題を変えることにした。
「夜光虫って、なんで光るんだろうな」
「たしか、餌をおびき寄せるためだってタク先輩がいってたよ」
予想外の返しに、驚くと同時に心のどこかが冷えた気がした。
「餌って、夜光虫はプランクトンなんだろ?」
「他のプランクトンを食べるんだよ。肉食なんだってよ」
あんなにキレイなのに、肉食なんて意外だよな、とケンジは続けた。まったく同感だった。あの光ににそんな意味があったなんて。
そこでオレの脳裏にある考えが浮かんだ。
美しい光に引き寄せられ、餌となるプランクトン。それって、まるでオレじゃないか。肉食というが、プランクトン以外のものも食べるのだろうか。例えば、動物の死骸とか。
夜光虫の光の中に現れた、名前も知らないあの女性。ここに住んでいる、というのは夜光虫がいる海に住んでいる、ということなのだろうか。あの美しい姿はオレを引き寄せるためのもなのだろうか。オレを夜光虫の餌にするために。そんなはずがない、と思う一方で、あの体温を感じないキスは、まるで生きた人間ではないかのようだったとも思う。リコと幾度となく交わしたものとは、明らかに違っていた。
確かめたい衝動に駆られた。早くあの女性に会いたい。ケンジがまた写真撮影に夢中になっているのを見届け、オレはそっとその場を抜け出した。
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