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タイムリミットは迫っていた。 駅から真っ直ぐ伸びる大通りを、コンビニで買ったビニル傘を片手に、全力疾走する。 全身全霊を注いでと言うことばが、こんなにぴったりと当てはまる場面が、自分の今までの人生にあっただろうかと思う。 夕方から降り出した雨。 ただでさえ時間に余裕がなかったのに、ずぶ濡れになるわけにもいかず、コンビニで傘を買った。 駅を出てすぐにバスは来たのだが、いつもならバスで10分ほどの道が、雨のせいか渋滞で、なかなか進まない。 すぐに雨は上がったが、渋滞の解消には時間がかかり、歩道を歩いている人に追い越され、追い越し返したかと思えば、また追い越されるといった状況に、業を煮やし、バスを降りて走り出した。 なんとしても、七時までに、受付に着かなければならない… 一年三カ月待って、やっと診察を受けることが出来た全国的に有名な不妊専門クリニック。 二度目の治療にトライしたが、残念ながら3日前に生理が来てしまった。 生理が来たのが、金曜日の夜。 土曜は予約診察のみのため、受診出来ず。 日曜日は、休み。 そして、今日が四日目。 明日の五日目までに、受診出来なければ、今回の周期は見送ることとなる。 明日は、六時からの面談が入っており、受診出来るのは今日しかない。 今日受診出来なければ、次の治療は一カ月後。 そんな事が二回の続けば、治療の出来る環境を整えてから来てくださいと、病院側から断られる事もあるとネットで見た。 もっともだと思う。 治療を受けたいと、年単位で待ってる人もいるのだから、病院に対してもだが、その人達に対しても失礼な事になるのだから… だから、本当に必死だった。
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