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--ある元騎士団員視点--
最初は多分、アルフレートが騎士団に入隊して暫くたった時だったと思う。
金髪に金の瞳という、とても目立つ容姿に貴族の肩書き、騎士団の中でもあいつはとても目立っていた。
その時のオレは初めて後輩を任されたってだけの単なる騎士団員で自分の事だけで精一杯だった。
それを言い訳にしてはいけないのかも知れないが、それに気が付いたのは事が起きてからだった。
無表情で同期を殴りつけるアルフレートをただ茫然と見つめる。
怯えを孕んだ表情をし、殴られる後輩を庇う様に間に入る。
殴られた後輩が因縁を付けた事は知っている。
今まで、ネチネチと嫌がらせの様な事をされていた事も知っていた。
役の付いていない騎士団の中で、貴族と言う事実がさほど影響しない事も。
昇格の可能性のある子爵以上の貴族であれば話は別であろうが、男爵と下級貴族に対しては劣等感のぶつけどころになっている事も分かっていた。
なのに俺は何もしなかったのだ。
無表情にオレを見つめるその目が少しだけ怖かったのだ。
戦争で人を殺して、魔獣と対峙した事だってあるはずなのにただ、その視線が怖いと思った。
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