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月を見ながらグラスを傾けていると、アルフレートが戻ってきた。
俺の向かいの椅子に座る。
「お疲れさん。」
適当にアルフレートの分もウィスキーをもう一つのグラスに注ぎ渡、した。
戸惑った様に、グラスと俺を見比べるアルフレートを見て不思議に思う。
「飲んで、いいんですか?」
「飲んでいいんじゃねーのか?」
何のことを言っているか分からなかった。
「だって、俺アンタと飲むたびに……。」
顔をぐしゃりと歪めてアルフレートは声を詰まらせた。
それで漸くなんでアルフレートが戸惑ったのかが分かった。
「アルフ、お前ばっかじゃねーのか。
一滴も酒入って無くても、犯したって言ってたのどこのどいつだよ。」
ばかばかしくて盛大に笑った俺をアルフレートはぽかんと見つめていた。
「そもそも、愛の営みってのはそんなにしちゃ困るもんなのか?」
別に減るもんじゃないし、堂々としてればいいのに、こいつは馬鹿だ。
戦わせたら国で一番強い男の態度じゃないな、なんて思っていたら、アルフレートは娘に向けるのとはまた別の優しい顔をして言った。
「俺を、幸せにしてくれてありがとう。」
突然だったので、思わずはっ、という吐息が漏れた。
そんな事を言われるとは思わなかったのだ。
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