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俺は無言のまま、副長からの書状を団長に押し付けるように渡した。
それから、膝を折り
「なにとぞ、目をお通し下さい。」
声を張り上げた。
這いつくばれば、この人が現状に気が付いてくれるのであれば別にそれをしてもかまわないと思った。
俺の必死さに負けたのか何なのかは分からなかったが、副長からの手紙を団長は読み始めた。
その顔は読み進めるにつれて血色が悪くなっていき最後には酷く動揺している様だった。
こんな団長を見るのは初めてだった。
「貴様はグレンの子を見た事があるのか。」
それは獣のうなりの様な声だった。
「……はい。金色の瞳と金色の髪を持つ子どもでした。」
団長は目を見開いた。
「グレンは俺の事を父親だと言っているのか。」
「……いいえ。しかしながら、きっと覚えていないだろうと、そう言っていました。」
酔ったはずみなのか何なのかは聞いていないので知らない。
だが、確かにグレンさんはそう言っていた。
団長は長い長い溜息をついた。
「グレンが騎士団を退役した事、子どもを一人で生んだ事に間違いは無いんだな。」
「はい。」
「なぜ、お前がこれを?」
「副長が、帝都に入ってからでは遅いと。」
「そうか。」
団長は手で目頭を押さえる様にした後、俺に一つ頼みごとをした。
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