番外編その1

1/3
796人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ

番外編その1

久しぶりにアルフレートが王城から帰ってきた。 今日は満月で、月明かりが薄ぼんやりと光っていてとても綺麗だった。 グレンは窓際にある椅子に座るとグラスにウィスキーを注いだ。 アルフレートの屋敷での生活はいつまでたってもあまり慣れない。 娘は直ぐに使用人とも馴染み、父であるアルフレートにも懐いた。 今も、アルフレートが娘の寝かしつけをしている。 普段城内で暮らすアルフレートはこうやって自宅に帰ってくると娘にべったりだった。 寝かしつけといっても、ベッドの横にある椅子に座って、話をして、本を読み歌を歌うだけだ。 その時間が、アルフレートにとって、とても大切な時間だという事を知っている。 娘に向ける顔が何より優しい。 そんな優しい顔は全く見たことがなかったので最初こそ驚いたが、優しい気持ちになることが出来たアルフレートを見て嬉しかった。 なのに、アルフレートは俺が顔を出すと、照れたようにその表情を引っ込めてしまうのだ。 また魔獣が表れても、どこかの国と戦争になってもきっとアルフレートはそんな顔をする余裕が無くなるだろう。 だから、娘との時間を大切にしてやりたいと思った。     
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!