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番外編その1
久しぶりにアルフレートが王城から帰ってきた。
今日は満月で、月明かりが薄ぼんやりと光っていてとても綺麗だった。
グレンは窓際にある椅子に座るとグラスにウィスキーを注いだ。
アルフレートの屋敷での生活はいつまでたってもあまり慣れない。
娘は直ぐに使用人とも馴染み、父であるアルフレートにも懐いた。
今も、アルフレートが娘の寝かしつけをしている。
普段城内で暮らすアルフレートはこうやって自宅に帰ってくると娘にべったりだった。
寝かしつけといっても、ベッドの横にある椅子に座って、話をして、本を読み歌を歌うだけだ。
その時間が、アルフレートにとって、とても大切な時間だという事を知っている。
娘に向ける顔が何より優しい。
そんな優しい顔は全く見たことがなかったので最初こそ驚いたが、優しい気持ちになることが出来たアルフレートを見て嬉しかった。
なのに、アルフレートは俺が顔を出すと、照れたようにその表情を引っ込めてしまうのだ。
また魔獣が表れても、どこかの国と戦争になってもきっとアルフレートはそんな顔をする余裕が無くなるだろう。
だから、娘との時間を大切にしてやりたいと思った。
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