恋の訪れ

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恋の訪れ

 今年の夏、俺は病院で過ごすことが決まった。  街で一番大きい大学病院。  敷地は広く中庭もあったり、売店も揃ってる。過ごしやすい環境といえばそうだ。  そこへ俺は太ももの骨折が原因で3週間入院することになった。 「リョーヤーいつになったら退院するんだよ」  見舞いの品のリンゴをかじりながら椅子の上でジタバタするコイツはケイスケ、小学校から高校までずっと一緒だった。就職したケイスケと大学に行った俺は今では中々一緒に遊ぶ機会が無い、今日会うのも久しぶりだ。 「一昨日入院したばかりで何言ってんだよ」 「でもー社会人は夏も忙しいんだぞ」 「俺はまだ学生なんで夏休みは存分にあるんです」  5個もあったリンゴを食べ尽くしたケイスケは不満そうな顔をして立ち上がった。 「リンゴ、俺の分は?」 「それにしても個室っていいなー全裸でもいけるぜ」 「話を聞け、そして全裸になった瞬間ナースコールを押すぞ」 「それに隣の部屋には可愛い子も居たしー」  壁に耳を当てる上半身裸の男を今すぐぶん殴りたいがその気持ちを抑える。 「だから話を――」 「まーそー怒るなよ、今日は帰るから、じゃあお見舞いのもの置いていくぞー」  そう言ってリンゴを10個置いてケイスケは去って行った。 「……。……逆に増えてるし」
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