1章 繭玉と怪異

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羯諦羯諦(ぎゃていぎゃてい) 波羅羯諦(はらぎゃてい) 波羅僧羯諦(はらそうぎゃてい) 菩提薩婆訶(ぼじそわか) 般若心経」 結びの文言を聞き終えるや、塩竈が思い出したように顔を上げる。 「前々から気になってたんですが。何ゆえに最後のその、ギャーテーギャーテーなんとかの部分だけやけに呪文みたいなんです?」 「うん。最後の部分はな、仏教の古い言葉そのままの読みをしている。意味はそれまでの経文の総まとめ、まあ要約だな」 「要約? ほならその部分だけ読めば手っ取り早いじゃないですか」 罰当たりな言葉に空穏の手が止まる。呆れ顔で振り向くと雄牛がだらしなく寝そべっている。
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