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繭の厚みは一寸もあろうか、想像以上に骨の折れる作業だ。
気をつけていないとすぐ剃刀が生温かい粘液にまみれて手から滑り落ちそうになるから、乳白色に染まる手を何度も布で拭った。
濡れたボロ布が三枚重なったところでようやく下部まで断ちあげると、ぱっくりと口を開けた繭の裂け目に両掌を挿し入れた。
ぐっと左右に押し分ける。と同時に乳白色の粘液がとめどなく板間に流れ出す。
その中に守られていたものを凝視し、息を飲んだ。
繭玉の中には生糸のように白い、白い人体ーーおそらくは女のそれが、まるで母親の胎内にいるややこのように、ぎゅっと四肢を縮めていたのである。
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