1章 繭玉と怪異

16/20
前へ
/181ページ
次へ
「ブモォーー! 小生 卑しき畜生なれど、美しいものは美しいと分かります」 塩竈は短い脚を組み直し、蹄を合わせてカチカチと鳴らした。 「愛らしゅうございますなあ」 本当にそうだと空穏も頷いた。職業柄、人の体は見慣れているが、このように白い個体は見たことがない。 清らかな目元に長い睫毛が影を作り、顔の中心に小さな鼻がちょんと上を向いている。 年のほどは分からないが、仰臥させるとあまり目立たぬ胸の膨らみと細い腰から、成人には満たないだろうと予想された。 どうしても目を引くのは、そのささやかな胸の膨らみの上で唇と同じ色に染まる一対の蕾である。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

316人が本棚に入れています
本棚に追加