1章 繭玉と怪異

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「はぁ、小生がもし人間のオスなればぜひこのような娘さんと仲良くしてみとうございます。ほんに可愛らしい。いえ可愛らしいのは分かりましたが、その。そろそろ着物なりかけてやったらどうなんです」 じろりと塩竈が白い目をする。空穏はうっかり見惚れた己に恥じ入り居心地悪く肩を揺らした。 それは美しい乳房を見れば心動くのが男の性なれど、そこはそれ空穏にも僧の一分とも呼ぶべき矜持がある。 こういうときは心の中で大般若経を唱え『無になれ無になれ』と己を抑え込むしかない。 口元に顔を近づけると、かすかな息が感じられる。 空穏は乱れたたすきを一度解き、崩れぬようにきつく結わえ直した。引き締まった筋肉が露わになる。 濡れた人体を(むしろ)に寝かせ、汲んだ川の水で体の清拭を済ませる。病巣の気配はない。
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