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洗い立ての白衣で首から下を覆ってから、太い脈の流れる大動脈口の上部を手指で圧迫した。
脈の周りにある何十もの筋肉のコリを見つけてはそこに指先を沈める。じっと押し続けることで鬱血が解消され、神経が落ち着いていくのだ。
その指をさらに脇腹へと移し、大腿四頭筋をほぐしたら、次は乳房から指三本うえの部分を掌で圧して心筋をやわらげる。
これにより改善した血の巡りの働きによって、脈打つ力が少しずつ強まっていった。
次の工程に入ろうと手を離したその時である。白衣からはみ出した女の手が、すっと半透明に透き通った。
やがて滑らかな額に汗が浮き、息が乱れて眉間が苦悶に歪み始める。意識は戻らない。
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