1章 繭玉と怪異

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空穏は患者の白衣を剥ぎ取ると、裸の全身を隈なく診た。すると身体のあちこちが円状の半透明になって、向こう側の敷き物が透けて見えるではないか。 もう一つ気になるのは、(へそ)の下で黄金色に光る蓮華の花のような模様である。それは痣なのか、或いは刺青か、いったい何故に光るのか触れてみただけでは分からなかった。 どうも生身の人間ではない。精霊か物の怪か、呼び名など検討もつかぬが、ただ〈人ならざるもの〉と捉えるしかなさそうである。 (よく分からんがとにかく、体の反応が出てきたのは良い兆しだろう) と己に言い聞かせて希望を持つしかない。 事実、体が透き通ると同時に苦しみの根源が黒い斑点となって点々と色づいて見えた。
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