1章 繭玉と怪異

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そう、見えたのだ。空穏は指先の感覚を頼りに腕、肩、首、心筋、胸筋、足の筋に巣食う斑点の下をゆっくりとほぐし始めた。 治療が進むにつれ、徐々に患者から苦悶の表情がやわらいでいくようだ。 半透明に透き通った所は色を取り戻し、冷や汗が引き始めれば呼吸が落ち着いてくる。安らかに入眠できたのかもしれない。 霞む目をこすると、辺りはもう暗くなっていた。土間にひとつの格子窓からは宵の群青が射し込んでいる。 終わりに白衣を着せ、就寝用の着物を掛けてやれば出来ることはもうない。 人事は尽きた。あとは祈るだけだ。
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