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土間の藁に腕を突っ込み、保存しておいた桃を手にする。痛み始めて芳醇な匂いをさせてはいるが食べ頃は過ぎていない。
錆びた包丁の刃を当てる。そろそろ研ぎ直さねばならんなぁなどと思っていると、
「キャアアーー!!」
再度あがった悲鳴と同時に桃が真っ二つになった。あやうく手まで二つにするところだった。
「どうしたっ」
駆けつけてみると衝立の端に何か落ちている。身だしなみ用の鏡であった。
「かみ、あたし、あたしの髪、髪が、目が」
頭を抱えた娘が震えている。この娘は自らの白髪なるを知らなかったのだ。
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