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好色そうに口もとを歪め、
「どれ、あっしにもその美人を拝ませておくんなせい」
などと言って、引っ込みかけた白い手を握りしめる。
「おやめください!」
空穏が止めに入る間も無く衝立を薙ぎ倒した男は、勢いよく繭にのしかかった。
「あ……」
いったい何が起きたのかも分からない、繭の白く長い髪が床に散らばる。淡黄の目にはそら恐ろしい男の笑みが映り込んでいる。
しかしその笑みは一瞬で鬼面に変わった。
「あれ、おめえ……いやまさか、そんな筈はねえ。気色悪いなりしやがって、化け物め」
言い捨てた後は床板を踏みならし、ドカドカと庵を飛び出していく。
「繭!」
抱き起こした空穏の胸のなかで繭は唇の色までも失いかけていた。
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