2章 繭から生まれた……

14/20
前へ
/181ページ
次へ
好色そうに口もとを歪め、 「どれ、あっしにもその美人を拝ませておくんなせい」 などと言って、引っ込みかけた白い手を握りしめる。 「おやめください!」 空穏が止めに入る間も無く衝立を薙ぎ倒した男は、勢いよく繭にのしかかった。 「あ……」 いったい何が起きたのかも分からない、繭の白く長い髪が床に散らばる。淡黄の目にはそら恐ろしい男の笑みが映り込んでいる。 しかしその笑みは一瞬で鬼面に変わった。 「あれ、おめえ……いやまさか、そんな筈はねえ。気色悪いなりしやがって、化け物め」 言い捨てた後は床板を踏みならし、ドカドカと庵を飛び出していく。 「繭!」 抱き起こした空穏の胸のなかで繭は唇の色までも失いかけていた。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

316人が本棚に入れています
本棚に追加