316人が本棚に入れています
本棚に追加
「すまぬ怪我はないか」
問えばゆっくりと首を横に振り、
「あのひと、あたしを化け物と、化け物と……」
「案ずるな。お前のことは私がきっと守る」
ほろほろと涙する繭を慰める一方、繭を見たときの男の態度に少しの疑念を感じた。あの男、一瞬、繭を誰かと勘違いしたようだった。いったい誰と混同したのか。
考える間もなく次の訪問者が木戸を叩く。
「あいすみません、今日は臨時の休みをいただいております!」
戸口に向かって声を張り上げれば、
「わたしですよ」
勝手知ったるの声がして、これは心強い助っ人がきてくれたぞと内心安堵する。
最初のコメントを投稿しよう!