2章 繭から生まれた……

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ところでーーと、比丘尼が声を抑えて改まる。 「実はお伝えしたいことがございまして、今日 (わたくし)は参ったのです」 その細やかな所作と口調が比丘尼の並々でない出自を物語っていた。空穏も居を正して向かい合った。 「どういった次第でございましょう」 「はい。実は、前に見せていただいた痣のようなもの。そうこの子のお腹にある、あの蓮華ですわ……。村の古い方ならご存知かと思って、信徒の女性に伺ってみたのです。 ほら、私ももとは他国の出にございましょう。だから私の村と言いましてもこちらの古い風習などは存じませんの。ええ、それで信徒の方のおっしゃることには、蓮華の印は、魔封じの焼印ではないかと……」 「焼印?」 穏やかでない響きに空穏の眉が跳ね上がる。
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