2章 繭から生まれた……

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「ええ。つまり、死後に悪さを出来ぬようにと与えられたものーーかしら?」 「しかし……」 「そう確かにこの子の蓮華は、焼きごてでつけられたように私には見えました。けれど、罪人でもないでしょうにねぇ……」 皺の目立ち始めた指先が繭の額にかかる前髪をそ、と払う。少女の薄い瞼がわずかに動いた。 「罪人の他にも印をつけられる(ためし)はあるのでしょうか」 空穏が話に踏み込むと、比丘尼はふいに押し黙った。 「比丘尼どの」 たたみかけると、一度つぐんだ唇がためらいがちにまた息を吸う。
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