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そんなお供の気持ちなどどこ吹く風で、繭玉に手をかけた空穏は間近に中を見つめた。完全な不透明の楕円かと思ったそれはちょうど蚕が繭になり切る直前、縦横無尽の浮織りになるあの状態に似ていた。
目を凝らすと奥の方にうっすらと桜の花弁がーー否、桜の花弁のような小さな唇が霞んでいる。
「塩竃!」
「へっ」
巨大繭を両腕で抱え上げた空穏は塩竈の背に躊躇なくおろした。
「ブモォーー!? ちょっと変なもの載せないで下さいよぉ!」
「すまんすまん。すまんついでに、庵まで運んでくれぬか」
「ええーー、それ正気で言ってるんですかぁ……?」
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