ー空ー 戦国あやかし恋華【大賞受賞、電子書籍発売中！続編あり→作品紹介にリンク】

２章 繭から生まれた……

「そのーーいけにえの」

「は、何です？」

「生け贄、でございますよ。そら、日照りや干ばつ、川の氾濫のおさまらぬ折に、許しがたいことだけれど、しばしば犠牲に立てられる子らが……」

「それが繭だとおっしゃるのですか」

「分かりませんわ」

比丘尼はかぶりをふったが、

「なれどくれぐれもこの子を無事にお守りくださいませ。頼みますどうか、くれぐれも」

顔を上げた嫗の眼はじっと熱を帯びていた。

「は、ーー」

低頭しつつ、これは想像以上に根の深い事情があるのかもしれぬと繭の寝顔を見つめた。