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庵に染料を持ち込んだ比丘尼はそのまま染毛を引き受けた。染毛には五刻を要するので、途中から空穏が比丘尼の後を引き継ぐことにする。
だがそれを伝えると繭は予想外に抗った。
「自分で、自分でできますからっ」
狭い室内をぱたぱたと逃げ回る細腕をやっと掴み、小柄な体が怯んだところで説き伏せる。
「鏡は一つなのだから後ろも見えぬぞ。お前ひとりで染めるのは無理だ」
そんなに私の手伝いでは嫌かと呟くと、
「そうではございません!」
金色の必死な瞳がこちらを向く。
空穏は衝動的に繭を抱きしめたくなった。無論それは一瞬のことで、すぐに平素の自分を取り戻すのだが、消えた後にも切ないような、澄んだ朝焼けが胸に残った。
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