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「私が嫌でないのなら、強情を張るのはやめなさい」
柔らかく諭すと繭は黙し黙ったが、やがて観念したように頷く。
「よい子だ」
おつむをてんてんとしてやると、繭の頬がぷうぅと膨らんだ。
細く艶やかな繭の髪にまんべんなく櫛を通そうとすると、首回りの髪をかきあげる度に注意していても白いうなじへ指先が触れてしまう。すると、
「ひゃっ」だの、
「きゃっ」だのと声が上がる。
「すまぬくすぐったいか」
「ヒッ! いえ……すみません」
恐縮したように小さくなる背中に、
(よほど肌が敏感なのだな。不憫)
などあさってな同情をしていると、
「朴念仁めが」
塩竈が鼻を鳴らしてフヒヒンと寝転んだ。
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