3章 あわ色の恋

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「己のやりたいように……?」 おうむ返しに唱えた繭は、何かを決意したように胸の前で手を握った。 「その、空穏さま」 「なんだ」 「あのう、あたし、たったいま自分の歳を思い出したんです」 「ほう、いくつなんだ」 さして興味もなく鉢に入れた鉄漿水に櫛をつけると、 「ーーはっは、はたちです!」 やおら大声があがったので、空穏が鉄漿水をこぼして塩竈が鼻ちょうちんを破った。 (絶対に嘘だ) と分かるのだが、言い切った繭の妙な気迫に押されて口には出せない二人であった。
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