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染毛は三日とあけず続けられた。
染め直す時に前の色が多少は残っているから回を重ねるごとに少しづつ付きは良くなってくる。
染毛の朝を迎える度に、繭の笑顔は増えていった。
怪異の患者は後を絶たず日中はせわしいが、なかには病を装って近づいてくる心がけの悪い患者もいる。
「ねぇせんせ、今日こそあたしの良い人になっておくれよ。まァ見れば見るほどいい男……」
一目で水商売と分かる女が、庵の中でつぅと空穏の頬に指先を這わせて紅の唇を寄せてくる。
「はは、坊主をからかうものではありませんよ。痛いところが無いのならお引き取り下さいませ」
こういう手合いが一番困るのだが、空穏の世話役である比丘尼のてまえ無下にもできない。
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