3章 あわ色の恋

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その日の夕餉、土間に山と積まれた草を食み食み塩竈が何気ない振りをしてこんなことを聞いた。 「ねえ空穏さん。空穏さんはその、いい人を作る気はないんですか」 「なんだ藪から棒に」 つまらなそうに水ばかり飲む空穏に対して、かちんこちんに肩をいからせる繭である。聞きたい、知りたいと背中に書いてある。 「だって片っ端からお断りしちゃうから。ご決心でもあるんですか? 女色は邪道だみたいな」 むろん坊主に妻帯は許されていないがそれは建前にすぎない。大っぴらでなくとも内縁の妻や愛人を持つ者はいくらでもいる。
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