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4章 悪食《あくじき》と妊婦
それからひと月を過ぎたある朝である。
「……重い」
空穏の側で寝ていた繭が下腹を抱えて起き上がった。
「どうした、腹が痛むのか」
「いえ痛みは無いのですが、何だか急に下腹が重くて」
「重い?」
「小さな魚が入っているようなーー?」
小首を傾げて、柔らかな下腹を撫でまわす。
「ならば寝ていなさい。すぐ治療してやるから」
空穏は土間に降りると水甕の柄杓を手にして、フチがあちこち欠けた鉢に水を注いだ。
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