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数ヶ月後、フランシスとカレンはめでたく式を挙げた。国中の、ともすれば国外からの要人を招いた華やかな披露宴で、私はふたりに祝福の言葉をかけて、それからひとりでぼんやりと会場内を彷徨った。
花びらのようにドレスの裾を翻して、淑女たちが紳士とダンスを踊る。その向こう側に、不似合いな紳士服で着飾ったあの男の姿を見つけた。
私は給仕に声をかけ、白いシャンパンを受け取ると、揺れ動く人波の合間へと足を踏み入れた。
幸いなことに、人の影に視界を遮られても、私が彼を見失うことはなかった。大柄な彼は人混みに紛れていても頭ひとつ抜きん出て目立つからだ。
彼がいつ私に気付くのか。
それを考えると、何故だか胸がどきどきした。
一歩、また一歩彼の元へと進みながら、ほんの少しの違和を感じる。
私は本当に、彼を知らなかっただろうか。
だって、その胸の紋章は……。
振り返った彼の眼が、ふと私を捉えた。
私は精一杯澄ました振りで彼の前に進み出て、そして華やかに笑ってみせた。
「御機嫌よう、オズワルド殿下。シャンパンはいかが?」
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