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 しかし、また翌日、懲りもせずに彼はやってきた。  曰く、「突然婚約を破棄されて、腹が立たないのですか」と。  私はうんざりしながら、けれどもそれを表情には出さないように、努めて冷静に彼に話して聞かせた。 「振られて当然なんです。だってわたくしは、フランシス様のことをこれっぽっちも好きじゃなかった。容姿も身分も完璧な『彼女の自慢の恋人』を横取りしてやりたかっただけなんですもの。ですからあの夜泣いていたのも、婚約を破棄されたことで傷ついたからではないのです。何をしても彼女に及ばない愚かな自分に嫌気がさしたの」  彼は黙って私の話を聞いていた。穏やかな眼差しで、ただじっと私の顔をみつめていた。 「貴方はとても優しい方ですわ。わたくしなんかよりもずっと、貴方にふさわしい方がいらっしゃるはずです」  愛想の良い笑顔を作ってそう告げると、私は玄関の扉を閉めた。
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