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翌日、男はふたたび私の元を訪れた。
厳つい顔に似合わない腕いっぱいの花束を抱えて、彼は屋敷の玄関先で私に求婚した。
「おやめになったほうがよろしいかと思います。わたくしは、フランシス様のように容姿の美しい殿方でないとときめきませんの」
私はにっこりと微笑んで優美に一礼してみせた。
わりと本気で、私は線の細い綺麗な男が好きだった。少なくとも目の前に立ち塞がる筋肉ダルマのような男はタイプではなかったのだ。
男は一瞬気圧されたようだったけれど、すぐに唇を引き結んで、私にずずいと花束を突き付けた。
「見てくれはこの様ですが、貴女を想う気持ちは本物です。必ず貴女を幸せにします」
「……でしたらなおさら、おやめになったほうがよろしいですわ」
私は面倒になって、フランシスと婚約したのはカレンの大切なものを横取りしたかったからなのだ、と、彼にありのままの事実を教えてやった。
元々私はフランシスのことなんてどうでも良かったのだ。ちょっと顔は良いけれど、口論で私に勝てたことなんて一度もない情けない男だし。だから、あんな男、カレンにくれてやったのだと。
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