死霊使い

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   霧状になった毒の魔法は黒竜から視覚を奪い、身体の機能を停止させる。そこへ拳を黒竜の頭部に当てた骸骨がそのまま両拳を加速させ連打する。  ただ骨だけとなったその身はもろく、一撃一撃与える毎にひび割れ破損し砕けていく。  そこへ再び剣を構えた2体の骸骨が黒竜の翼へ剣を斬り付けたが、やはり黒竜の体には傷一つ付かなかった。  防戦となった黒竜とは言いがたい、ただ眠るようにその場に伏した黒竜だったが、微かに鼻を動かし遠くで指示を出す死霊使いの臭いを探る。  そして、視覚を失われようとも死霊使いの位置を把握した黒竜は突然翼を広げ、うるさい蝿を払うように3体の骸骨を吹き飛ばし、地面を蹴り砂埃を舞い上げながら死霊使いへと襲いかかる。  それを見た死霊使いは隣に立った骸骨を軽く前に押し出すと、骸骨は魔法で鋼鉄の分厚い壁を創り出した。  突然地面から隆起した壁。しかし、黒竜はそれも気にせず息を吸い込むと次に鳴き声と共に目映いばかりの高温の火炎を吐き出した。その火炎は真っ直ぐに鋼鉄の壁に直撃すると、飛散することもなく鋼鉄を滝に向けて投げた丸太の如く飛沫を上げて突き抜けた。  鋼鉄の壁の裏にいた骸骨は熱せられ赤くなった壁の熱で燃え始め、光線とも呼べる程の火炎が突き抜けた時には灰となり、それを見て一瞬顔をひきつらせた死霊使いはその光線により消滅した。  翼を広げ咆哮を上げた黒竜の周りに残りの骸骨が近付くが、それも直ぐに動きを止めて土へと還っていく。そして、空間が歪み光の輪が現れると黒竜はそれを潜り抜け姿を消した。  少しずつではあるが、確実に黒竜は強くなる。戦った相手の攻撃を受け耐性を持ち、出現し消え去るまでに進化をする。  それが最強の生物と云われる由縁なのだ。  
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