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足を地面に付け背筋を伸ばし歩く人とは違い、その者は猿の姿勢に近く手を地面に付けて歩行していた。
竜喰い。
そう名付けられたのはその者が人ではなく魔物に育てられ、黒竜程の強さは持たずとも、地上では上位に位置する竜を喰らい生きていた者だったからだ。
言葉も話せず育った人間は既に人間に有らず、魔物に分類されてもおかしくない姿だった。
薄汚れた褐色の肌に背を隠すほどに伸びた髪。硬い竜を食いちぎる為に並んだ鋭い牙。前傾姿勢になった背は曲がっており、その体つきは細く見えるが薄い皮の下に筋肉が硬く押し込められているように感じられる。
竜喰いを育てたのは魔狼と呼ばれる狼に似た魔物。その魔狼の主食が竜だったのだ。
しかし、いつも竜を見つけ食事にありつける事など滅多には無く、竜喰いは兄弟として共に育った魔狼と森の奥深くで魔物を狩りしていた。そして、魔狼が追い込み弱ったところを竜喰いが躊躇無く魔物の喉元を噛みちぎり息の根を止める。
調理などせず、その場で貪り魔物の血を飲み喉を潤しながら魔狼と食事する竜喰い。そして、魔物の骨を残し再び獲物を探そうと首を上げた時、聞こえてきたのは耳なりの様な音だった。
竜喰いは唸り歪む空間へ視線を向け、それを真似るように魔狼も首を低くし威嚇する。
現れた光の輪に何かを察知し同時に距離を取った竜喰いと魔狼。だが、現れた黒竜を見てその2匹の目の色が変わった。
黒竜が姿を完全に現す前に短く鳴いた竜喰いに、魔狼も短く鳴くと2匹は左右に別れ茂みに身を隠すと気配を断った。
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